生活保護問題対策全国会議

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2007年7月26日午前10時に北九州市役所では、生活保護問題対策全国会議代表幹事の尾藤廣喜弁護士(京都)、副代表の河野聡弁護士(大分)、幹事の國師洋典社会福祉士・精神保健福祉士(大分)、地元北九州から高木健康弁護士と高木佳世子弁護士が秘書室長に公開質問状を手渡しました。あわせてこの問題を「北九州市生活保護行政検証委員会」に任せるのではなく、北九州市でも独自に早急に現地の実態調査を行うよう申し入れを行いました。
 
その後市政記者クラブで記者会見を行い尾藤弁護士は、「北九州市の職員は生活保護法を一から勉強し直すべきだ。こうした違法行為を放置するどころか広めようとしている厚労省は許しがたい」と怒りを込めて訴えました。
 
(写真:小倉タイムス提供)
 
 

 


 
公開質問状
2007年7月26日

北九州市
 市長 北橋 健治 殿
 
生活保護問題対策全国会議   代表幹事 尾藤 廣喜
             (連絡先)〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16
                    西天満パークビル3号館7階あかり法律事務所
                    弁護士 小久保 哲郎(事務局長)
                    電話 06-6363-3310 FAX 06-6363-3320
北九州市生活保護問題全国調査団  団長 井上 英夫
全国生活保護裁判連絡会      代表委員 小川 政亮
          首都圏生活保護支援法律家ネットワーク                  
                        共同代表 釜井 英法
                         同   猪股  正
          全国青年司法書士協議会      会 長  伊見 真希
          特定非営利活動法人自立生活サポートセンター もやい
                        理事長  稲葉  剛
          フリーター全般労働組合    執行委員長 大平 正巳
          東京都地域精神医療業務研究会  代 表 飯田 文子
          首都圏青年ユニオン         委員長  伊藤 和巳
          働く女性の全国センター       代 表  伊藤みどり
          全国生活と健康を守る会連合会   会 長 鈴木 正和



1 私たちは、違法な対応が蔓延する生活保護行政の改善や充実に取り組む(あるいは、この問題に重大な関心を寄せる)民間諸団体です。
  本年7月10日、貴市小倉北区において、52歳の独居男性の一部ミイラ化した遺体が発見されました。新聞報道等によれば、男性は、昨年12月から生活保護を利用していたものの、同区福祉事務所職員のたび重なる就労指導を経て、同年4月2日に辞退届を提出し、同年4月10日付けで保護を廃止されたということです。

2「保護辞退届」については、福祉事務所による違法な保護打ち切りを糊塗する便法として悪用されていることが、かねてから問題とされてきました。
しかし、本来、
① 保護の受給要件を満たしている被保護者に対して、保護の実施機関の側から辞退を勧めることは、保護受給権の侵害につながり許されないものであり、
② 被保護者が、保護受給が継続できることを認識したうえで、任意かつ真摯に辞退を申し出たといえること、
③ 被保護者に経済的自立の目処(十分な収入が得られる確実な見込み)があり、保護廃止によって急迫した状況に陥ることがないこと、
④ 上記の②、③の要件充足性を確認するため、保護制度上、被保護者に保障された諸権利等を正確に教示し、辞退理由や、保護廃止後の生計維持方法等を聴取したり調査し、被保護者に誤解があれば正しい説明を行うなどの手順を踏むことという要件が満たされない保護の辞退を理由とした廃止処分は、無効となるものと解されます。
  そして、このような考え方は、広島高等裁判所2006年9月27日判決(賃金と社会保障1432号)及び京都地方裁判所2005年4月28日判決(判例時報1897号88頁)、東京都生活保護運用事例集(問8-46)及び2005年5月19日付京都市保健福祉局長通知「保護廃止時における適正な事務手続について(通知)」などにおいても、当然のこととして認められています。
  
しかるところ、上記保護廃止決定は、男性に経済的自立の目処がなく、保護廃止によって急迫した状況に陥ることが十分予想される中でなされた点、また、そのような事態を回避するため、保護廃止後の生計維持方法等を聴取したり調査するなどの手順を踏んでいない点で違法であると私たちは考えています。
さらに、保護の受給要件を満たしている被保護者に対して実施機関の側から就労指導の際に辞退を勧めたのではないか、男性が保護受給が継続できることを認識したうえで、任意かつ真摯に辞退を申し出たとはいえないのではないか、生活保護制度や男性に保障された諸権利を正確に教示されていないのではないかなどの強い疑念を抱かざるを得ません。

3 そこで、私たちは、貴市に対して、以下の諸事項を要望するとともに、事  実関係等に関する諸事項について照会します。ご多忙中とは存じますが、事件の重大性にかんがみ、以下の要望事項・質問事項について、8月20日までにご回答をいただきますよう、よろしくお願いいたします。

Ⅰ 要望事項
1 再発防止策の策定・公開
二度と同様の痛ましい事件が起こらないようにするための再発防止策を策 定・公開してください。
2 日記の公開または保全
(1) 貴市が保管されている男性の日記を私たちに公開してください。あるいは、少なくとも生活保護行政検証委員会に対しては公開してください。
(2) 事実関係を闇に葬ることのないよう、遺族に原本を還付するに際しては、コピーをとって保管してください。
3 類似ケースの検証
辞退を理由に保護を廃止した全ケースについて、元被保護者が急迫状況に陥っていないかどうかを早急に調査確認したうえで、その結果を公表してください。

Ⅱ 質問事項
1 Ⅰの要望に対し、どのように対処されるかご回答ください。要望に応じていただけない場合には、その理由を詳細に回答してください。

2 新聞報道等によれば、本件に関する事実関係の経緯は、別紙一覧表のとおりですが、事実に誤りがないか個別に認否(認める、否認または不知)してください。仮に、事実関係について誤りや不正確な点があれば、貴市の認識する事実関係をご主張ください。

3 昨年12月に保護開始決定をした際の判断内容についてご回答ください。
 ⑴ 男性の稼働能力についてはどのように判断しましたか。仮に稼働能力ありと判断したとすれば、どのような調査及び判断の過程をとったか明らかにしてください。
 ⑵ 男性に要保護性があると判断したのは、どのような理由からですか。できる限り詳細にご回答ください。
 特に、稼働能力はあると判断されていた場合、補足性の要件を満たすと判断したのは、現実に働く場を得られる見込みがないことを重視したからですか。
 仮に、生活保護法4条3項に該当するケースだと判断されたのなら、いかなる理由で男性が稼働能力を活用していないと判断したのですか。

4 男性の傷病・治療経緯について、本件保護廃止決定時に把握していた事項とそうでない事項に分けてご回答ください。
 ⑴ 男性は、肝硬変、潰瘍、糖尿病に罹患していたと聞いていますが、男性の傷病名とその症状の詳細を把握しておられる限りにおいて教えてください。
 ⑵ 保護開始から廃止に至るまでの、男性の通院状況、治療経過、症状の改善の有無について教えてください。

5 保護継続期間中の面接と就労指導状況についてご回答ください。
⑴ 保護継続期間中、福祉事務所内における面接及び男性宅における訪問調査は、それぞれ何回、何月何日に行われましたか。
⑵ 上記面接及び訪問調査に際し、男性に対し、就労指導をしましたか。したとすれば、何月何日、どのような内容の指導をしましたか。特に、単に口頭で就労を指示するだけでなく、具体的な支援を行ったか否か、行った場合には、その内容をご回答ください。
また、それぞれの就労指導に対する男性の対応はどのようなものでしたか。

6 保護継続期間中の生活状況等についてお聞きします。
 ⑴ 報道によれば、男性宅には電気、水道、ガスが通っていなかったということですが、こうしたライフラインの状態についての貴市の認識はどのようなものでしたか。保護開始から廃止に至るまで時系列でご回答ください。
 ⑵ 男性のご自宅は、壁に何カ所も穴が空き、ドアや窓のガラスも外れるなど住むに耐えない状態だと思いますが、この点についての貴市の認識はいかがですか。
 ⑶ 水道設備や家屋の補修のために住宅維持費を支給できることを男性に対して説明しましたか。しなかったとすれば、なぜですか。

7 辞退届の提出についてお聞きします。
 ⑴ 男性が4月2日に辞退届を提出するに至った詳細な経緯を回答してください。特に、以下の諸点についてご回答ください。
① 保護開始時からの男性に対する保護費の支給は、銀行振込、福祉事務所での現金等交付のいずれの方法でなされていましたか。
② 辞退届の提出は、小倉北福祉事務所内でなされましたか。そうだとすれば、なぜこの日、男性は福祉事務所に来所したのですか。
③ 4月2日、男性に対し、保護費の現金支給をしましたか。
(従前の支給方法が銀行振込であった場合)なぜ、この日には現金支給の方法をとったのですか。
④ 4月2日、男性に対し、就労指導をしましたか。したとすれば、どのような指導をしましたか。指導に対する男性の回答はどのようなものでしたか。また、就労指導と辞退届提出、保護費支給の前後関係はどうでしたか。
⑤ 貴市の側から男性に対して、辞退届の提出を勧めましたか。勧めたとすれば、どのような理由でどのように勧めたのですか。勧めていないというのであれば、なぜ男性は辞退届を提出したのか、その経緯を回答してください。
 ⑵ 報道によれば、男性の日記には、「働けないのに働けと言われた」との記載があるということですが、間違いありませんか。上記表現が不正確であれば、具体的にどのような記載があるのか回答してください。
 ⑶ 辞退届の書式の詳細を教えてください(貴市がワープロ等で準備したものに男性が署名押印したものであるのか、全てが男性の自筆であるとすれば、貴市職員が記載内容を指導したものであるのか)。

8 生活保護廃止決定の際の判断についてお聞きします。
 ⑴ 4月10日付で廃止決定をしたのはなぜですか。辞退届の提出から廃止決定に至るまで、どのような調査や内部的検討を行いましたか。
⑵ 廃止決定の際、男性に経済的自立の目途(生活するに十分な収入を得る確実な見込み)がありましたか。すなわち、男性の勤務先の有無、勤務開始日、給与支給予定日、見込額等についてはどのような認識でしたか。また、この目途の有無について、調査検討をしましたか。しなかったとすれば、なぜですか。
 ⑶ 廃止決定の際、男性の病状と廃止後に治療を継続できる目途があるか否かについて調査検討をしましたか。しなかったとすれば、なぜですか。 
⑷ 保護を辞退するか否かはあくまでも任意であることや、男性は未だ要保護状態にあって、保護を継続利用する権利があることを男性に対して説明しましたか。説明しなかったとすれば、なぜですか。

9 生活保護廃止決定後、男性が急迫状況に陥っていないかどうか、男性の生活状況を確認しにいかれましたか。確認していないとすればなぜですか。

10 辞退届による保護廃止の有効要件に関する貴市の認識についてお聞きします。
 ⑴ 前記の京都地裁判決、広島高裁判決の存在と内容については知っていましたか。
 ⑵ 辞退届による保護廃止が許されるためには、どのような要件を満たす必要があると考えていましたか。その理由とあわせてご回答ください。

11 新聞報道によれば、貴市の三崎利彦保護課長は、「自立がうまくいったモデルケースである」とコメントされたということですが、保護廃止後自立できず死亡に至った本件が、どのような意味で「モデルケース」と言えるのか、その趣旨を説明してください。また、現時点においても、この点に関する貴市の見解は変わらないのか明らかにしてください。
以 上