生活保護問題対策全国会議

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要  望  書

2007年8月24日

北九州市生活保護行政検証委員会 御中


生活保護問題対策全国会議 代表幹事 尾藤 廣喜
             (連絡先)〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16
                    西天満パークビル3号館7階あかり法律事務所
                    弁護士 小久保 哲郎(事務局長)
                    電話 06-6363-3310 FAX 06-6363-3320


 私たちは、弁護士・司法書士・学者・市民など約140人で構成する、生活保護行政の改善などに取り組む民間団体です。
 検証委員会の委員の皆さまにおかれては、北九州市の生活保護行政に関し、真摯な検証作業を継続されていることに、心から敬意を表します。

 本年7月10日、北九州市小倉北区において、52歳の独居男性の一部ミイラ化した遺体が発見された事件について、私たちは、本日、福岡地方検察庁小倉支部に対し刑事告発をするとともに、福岡地方法務局北九州支部に対し人権侵犯救済申告を致しました。
二度と同様の悲劇を繰り返さないため、貴委員会が最終的にまとめられる検証結果において、次のような「提言」を盛り込んでいただきますよう、要望致します。
ご検討のうえ、ご採用いただければ、幸甚に存じます。

【要望の趣旨】
1 「生活に困ったら生活保護を利用する『権利』があります。申請があれば福祉事務所は14日以内に判断をしなければなりません」という趣旨を、自治体広報誌の配布、あらゆる公的施設におけるポスターの貼付やしおりの備え置きなど、考え得るすべての方法を尽くして広報すること
2 北九州市のあらゆる公的施設において、誰もが手に取れる場所に生活保護申請書を備え置くこと
3 次のような内実を含んだ「生存権保障条例(仮称)」を制定すること
① 行政機関の社会保障制度に関する広報義務、情報提供義務、市民の行政機関に対する助言請求権の明文化
② 苦情処理のための、行政と独立した第三者機関(福祉オンブズマン)の設置

【要望の理由】
1 行政による周知徹底の必要性
北九州市では、福祉事務所の窓口を訪れた者に対し十分な情報が提供されないばかりか、誤った情報を提供し、生活保護の申請をさせず、あるいは違法に辞退届を提出させて保護を廃止するといった事態が蔓延し、本来制度を利用する権利のある多くの人々が排除されているものと思われます。3年連続の死者の発生という悲劇の背景には、このように歪んだ生活保護行政のあり方があると考えられるのです。
しかし、憲法25条が宣明する福祉国家の理念や、同条に基づく福祉立法をした立法者意思は、実際に利用権者が漏れなく給付を受け、法律によって創設された給付が飾り物に終わらないことを期待しています。そもそも、利用権者が権利を行使しうるためには、制度の存在と具体的内容が周知徹底されていることが当然の前提です。この周知徹底がなされず、偶然の幸運で自らに権利があることを知った者のみが権利を行使しうるというのであれば、法治国家原理や実質的平等の原則に違反するだけでなく、社会保障制度ひいては生存権保障が画餅に帰してしまいます。
したがって、行政機関は、生活保護を初めとする社会保障制度の存在と具体的内容を周知徹底する義務を負うのであり、具体的には、①一般的な広報を行う義務、②行政窓口での情報提供を行う義務、③対象者の個別の事情に応じた助言を行う義務が課されているものと解されます。
こうした観点からすれば、利用権者が漏れなく制度を利用することができるよう、あらゆる手段を講じて生活保護制度上の権利や利用方法を広報するとともに、生活保護申請書を誰もが手に取れる場所に備え置くことは、今すぐにでもなされなければならないことです。
2 市民の助言請求権、行政機関の広報・情報提供義務明文化の必要性
ところで、ドイツでは、1950年代から行政機関の助言義務等を認める判例が蓄積され、これが制定法として結実し、1975年に成立した社会法典総則(13~15条)において、社会保障給付に関する市民の権利としての助言請求権、給付主体の広報義務、情報提供義務が明確に規定されるに至っています(社会法典総則13条~15条)。
日本では、「広報、周知徹底は国の果たすべき責務であり、当然しなければならないことに属する」が法的義務であるとは言えないとした大阪高裁1993年10月5日判決や、窓口職員の教示義務違反を認めた大阪高裁2005年6月30日判決があるが、ドイツに比して未だ裁判例の蓄積は十分であるとは言えません。
そこで、上記のような違法な窓口規制の実態を是正し、生存権保障を実質化するため、解釈の余地がないよう、全国に先駆けて北九州市において、行政に対する助言請求権、行政の広報義務、情報提供義務を明文においた条例を制定することが求められています。
3  第三者機関(福祉オンブズマン)設置の必要性
北九州市の保護行政が抱える問題を解決するためには、生活保護制度を利用しようとする者や現に利用している者などのあらゆる苦情や相談について対応する第三者機関を設置することが必要不可欠です。2000年3月に福祉オンブズマン条例を制定した東京都大田区の先例などが参考になるものと思われます。
  求められる第三者機関は、社会保障に深い洞察を有する学識経験者や弁護士等によって構成され、行政機関と組織的に独立したものであるべきです。とりわけ、その具体的人選は重要であり、北九州市の従前の保護行政に対して明確に批判的な立場をとっていた人を積極的に任用することが求められます。
また、当該機関は、独自の調査権を持つとともに行政に対する勧告等の意見を表明する権限を有し、行政はその意見を尊重するものでなければなりません。

以 上