生活保護問題対策全国会議

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2007年8月24日

厚生労働大臣 柳澤伯夫 殿
厚生労働省社会・援護局長 中村秀一 殿
(関連部署:同局保護課、同局総務課指導監査室)

生活保護問題対策全国会議  代表幹事 尾藤 廣喜
              事務局長 猪股  正
             (連絡先)〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16
                    西天満パークビル3号館7階あかり法律事務所
                    弁護士 小久保 哲郎(事務局長)
                    電話 06-6363-3310 FAX 06-6363-3320
 

私たちは、本年7月26日、貴省に対し、北九州市小倉北区で辞退届により保護を打ち切られた男性の孤独死事件に関する公開質問状につき、回答期限を8月20日として提出しましたが、8月20日、貴省は、「本日回答する予定はない。全体としてどう対応するかにかかわるので、将来回答するともしないとも、いつ対応がはっきりするかもお答えできない」と対応しました。
生活保護運用上の重大な問題である本件についてのこのような対応は、私たち市民の声を黙殺しようとする極めて不誠実なものであり、同様の悲劇の再発を防ごうとする真摯な姿勢と責任の自覚に欠けるものであって、貴省の対応について強く抗議するとともに、すみやかに7月26日の公開質問状に対し回答するよう強く求めます。

また、貴省の社会・援護局総務課指導監査室によって例年行われている生活保護法施行事務監査が、北九州市に対して本年10月に行われる予定になっており、本件孤独死事件を起こした小倉北福祉事務所が監査対象となっています。この監査を機に、以下のとおり北九州市本庁及び小倉北福祉事務所の抱える問題点について徹底的に検討し、是正を指示することを強く求めます。

第1 面接相談について
1 小倉北福祉事務所に対する監査において、面接相談記録の検討を相当の時間をかけて徹底的に行い、申請権を侵害していないか、保護の受給要件について虚偽の説明を行っていないか調査してください。申請権を侵害している事例や虚偽の説明により申請を断念させていると疑われる事例については、直ちに当該申請者に連絡し、相談日を申請日として保護の要否についての調査を開始するよう指導してください。
2 北九州市の福祉事務所では、実際には申請の意思表示が行われたにもかかわらず、面接相談記録には意思表示が無かったかのように記載を懈怠、または虚偽の記載をしていることを疑わざるを得ません(資料1 北九州市生活保護問題全国調査団報告書17頁参照)。表面的な記述にとらわれることなく、面接主査に対して十分な事情聴取を行ってください。
3 申請すれば保護が開始されることが見込まれる方はもちろんのこと、保護の受給要件を満たしている可能性のある方に対して申請を助言していない事例については、面接主査に対してなぜ申請するように助言しなかったのか徹底して事情聴取を行うとともに、直ちに当該相談者に連絡して申請を助言するよう指導してください。
4 昨年度の監査において、小倉南福祉事務所の面接相談をいかなる点において「賢明に相談の対応に当たっている」と評価したのか明らかにしてください。

(要求・質問の事情)
生活保護法第2条は、保護を請求する権利(保護請求権)を無差別平等に保障しており、また、行政手続法第7条では、「行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければなら」ないと定められています。したがって、保護請求権を行使する具体的な方法である保護の申請は、絶対的な権利として保障されています。すなわち、保護申請があれば、福祉事務所は無条件に受理してすみやかに保護の要否についての審査を開始するのが生活保護法の根本原則です。申請自体を窓口で規制することは明確な違法行為であり、絶対に許されることではありません。
 また相談者が申請意思を示さなかったとしても、本来、保護の受給要件を満たしている可能性のある方に対しては、本人からの申し出を待つことなく、保護の実施機関である福祉事務所の側から積極的に申請を働きかけるべきです。この点については、現行の生活保護法の施行に当たって貴省が発出した「生活保護法の施行に関する件」(昭和25年5月20日発社第46号厚生事務次官通達)において、「生活に困窮する国民に対して保護の請求権を認めたことに対応して、保護は申請に基いて開始することの建前を明らかにしたのであるが、これに決して保護の実施機関を受動的、消極的な立場に置くものではないから、保護の実施に関与する者は、常にその区域内に居住する者の生活状態に細心の注意を払い、急迫の事情のあると否とにかかわらず、保護の漏れることのないようこれが取扱については特に遺憾のないよう配慮すること」とされており、また、法施行当時に厚生省社会局保護課長を務めた小山進次郎氏による逐条解説である『生活保護法の解釈と運用』においても、「申請保護の原則は、保護の実施機関をいささかでも受動的消極的な立場に置くものではない(新法基本通知第三の一、)。換言すれば、この原則が採られる事になったからといって要保護者の発見に対する実施機関の責任がいささかでも軽減されたと考えてはならないのである。従って、保護の実施機関としてはこの制度の趣旨を国民に周知徹底させ、この法律に定める保護の要件を満たす者が進んで保護の申請をしてくるよう配慮すべきは勿論(以下略)」と記述されているところです。従って、本人が明確に申請意思を示さなければ福祉事務所は何もしなくてよいなどということは生活保護法の精神に反するものです。
しかし、北九州市では、長年に渡り、面接相談において申請の意思を表明した市民が、面接相談担当の職員(面接主査)の違法な対応によって追い返されることが常態化していました(資料4「第3回北九州市生活保護行政検証委員会配布資料H」、資料2 北九州市生活保護問題全国調査団資料集82~90頁参照)。
昨年5月には、門司区において、二度に渡って保護申請の意思を表明した50代の身体障害者の男性が違法に審査を拒否され、ミイラ化した遺体で発見されるという餓死事件が発生しております(資料1 北九州市生活保護問題全国調査団報告書6~10頁参照)。
こうした申請権を侵害する対応に対する批判の高まりを受けて、今年3月からは面接室に申請書が常備されるなど、若干の改善は図られておりますが、未だに面接相談窓口における申請権侵害は後を絶ちません。
     この点について、昨年11月に同市小倉南福祉事務所に対して行った生活保護法施行事務監査において、貴省は何の指摘もしないどころか、「面接相談体制として『面接主査制』を導入し、保護の相談・申請段階において3名の面接主査が賢明に相談の対応に当たっている。」(資料3 厚生労働省監査結果概要(小倉南福祉事務所)」1頁)との評価を与えております。市民の生存権を踏みにじる北九州市の違法な面接相談の実態を黙認するどころか賞賛する貴省の姿勢に対し、強い義憤を禁じ得ません。


第2 生活保護廃止決定処分について
1 小倉北福祉事務所に対する監査において、保護廃止ケースの記録を徹底的に検証し、違法な廃止処分が行われた事例については、直ちに当該廃止処分を取消すよう指導してください。その際、特に以下の点に留意してケース検討を行ってください。
①保護の受給要件を満たしている被保護者に対して福祉事務所職員の側から辞退を勧めていないか
②被保護者から辞退の申出があった場合に、以下のことが十分に検討されているか
・被保護者が保護の受給要件や廃止事由等を正しく理解しているか
・保護受給が継続できることを認識した上で任意かつ真摯に辞退を申し出ているか
・保護廃止によって被保護者が急迫した状況に陥るおそれがないか
③指導指示違反を理由に廃止したケースで、弁明の機会が付与されているか
④保護の要件に係わらない指導指示に違反したことを理由に廃止していないか
⑤指導指示の内容は適切か
⑥収入増を理由に廃止したケースで、実際に入金される前に廃止していないか
⑦管外転出を理由に廃止したケースで、転出先の実施機関に適切な連絡がされているか
⑧医療費や国民健康保険料などを含めて要否判定しているか
⑨廃止後の諸手続(国民健康保険への加入等)は適切に教示されているか

2 前記の面接相談記録と同様に、ケース記録に記載の懈怠ないしは虚偽の記載が行われているおそれがあることから、地区担当員、査察指導員、保護課長、福祉事務所長等の関係職員に対して十分な事情聴取を行ってください。

(要求・質問の事情)
北九州市においては、保護受給者の自立の目途を何ら確認・検討することなく、辞退届のみをもって保護を廃止することが当然のように行われており、北九州市自身そのことを認めております(資料5 朝日新聞8月7日朝刊)。
この点については、北九州市が設置した生活保護行政検証委員会においても、検証委員から厳しく批判され、北橋健治市長は「生活保護を打ち切る場合、自立のめどが本当にあるかどうか、丁寧に見なければならない」と述べ、小村洋一保健福祉局長も「わずか数カ月で自立するというのは、乱暴な判断だったのではないか」と小倉北福祉事務所の対応を批判しています。
にもかかわらず、小倉北福祉事務所と保健福祉局地域福祉部保護課は廃止処分に問題はなかったとの態度を崩さず、それどころか、対応を変えるつもりもないとしています(資料6~10 朝日新聞8月1日朝刊、朝日新聞・毎日新聞・読売新聞・西日本新聞7月31日朝刊)。
検証委員会の稲垣忠委員長が7月30日に行われた第6回検証委員会の終了後に行った記者会見によると、小倉北福祉事務所職員は「辞退届さえ出させれば保護を廃止するのは北九州では当たり前で、ケースワーカー10人中10人がそうする」と答えたとのことです。また、辞退届による廃止のみならず、北九州市においては、不当な指導指示やそれに基づく廃止処分がしばしば行われていると関係者から指摘されています。
この点について、貴省が行っている生活保護法施行事務監査において廃止ケース記録の検討が一切行われていないことの問題性は7月26日付の公開質問状でも指摘しています。


第3 保護申請に対する法定期間の遵守および急迫保護の適用について
1 開始決定が違法・不当に引き伸ばされていないか、十分に検討を行い、早急な決定を行うよう指導してください。また、急迫した状況にある要保護者についてはすみやかに保護を開始するよう指導してください。

(要求・質問の事情)
    生活保護法第24条第3項は、保護の申請があった場合、実施機関は原則として14日以内に決定を行わなければならず、特別な理由がある場合にのみ30日まで決定を延ばすことができると規定しています。また、この規定をまつまでもなく、日本国憲法第25条により国民に保障された生存権の具現化である生活保護制度においては、要保護者が最低生活以下の状態で生活しなければならない期間をできうる限り短くする必要があることから、保護の実施期間は申請に対して早急に決定を行うよう、最大限の努力を行う義務を負っています。この点については、施行当時に厚生省社会局保護課長を務めた小山進次郎氏による逐条解説である『生活保護法の解釈と運用』においても、「適正な保護を実施するための調査を可能な限り敏速、的確に行い一四日以内に早急に決定通知書を到達することに努め、もって申請者に安定感を与えるべきである。」とされているところです。したがって、保護の実施機関が迅速な決定のための努力を怠り、生活保護法第24条第3項にいう「特別な理由」がないにもかかわらず、いたずらに申請者を要保護状態のままに放置することは、違法かつ極めて不当なものであります。
    しかしながら、北九州市においては、14日以内に決定がされている割合は一貫して50%を切っており(資料1 北九州市生活保護問題全国調査団報告書資料62頁)、原則と例外が逆転しています。
また、関係者からは、本来ならば法第25条第1項により要件調査を待たずに職権保護をもってすみやかに保護を開始すべき急迫状態にあるケースでさえ、14日を超えて急迫状態が放置されることもしばしば行われていると指摘されています。法第25条第1項および法第4条第3項の規定から、保護申請を行った者が社会通念上放置し難いと認められる状況に陥った場合は、資産調査等が未済でまだ保護の要件が確認できていなくても、実施機関はすみやかに開始決定を行う義務があります。

第4 保護受給者に対する保護の決定・実施について
 1 保護受給中の被保護者に対して生活保護法や実施要領に定める権利につき適正な保護の決定・実施が行われているかを検証するため、ケース検討において以下の点に留意して監査を行ってください。
   ①住宅改修費、臨時的一般生活費などの支給が可能な場合に教示を怠っていないか
   ②転宅費支給事由について正しい説明を行っているか
   ③生業扶助の支給が考えられる場合に活用を検討しているか
   ④高校生の就労収入から就学費用の控除を怠っていないか
   ⑤就労収入のある受給者について特別控除の適用を怠っていないか
   ⑥生活保護法63条の適用に際して、自立更生にかかる費用の返還免除の検討を行っているか
   ⑦生活保護法78条の適用について、交通費等の実費の控除を怠っていないか
   ⑧各種加算の認定漏れはないか
   ⑨児童養護施設入所中の児童が帰省した場合に食費、燃料費の支給を怠っていないか
   ⑩局1-2-(1)による世帯分離を文書指示→弁明の機会の付与を経ずに行っていないか
   ⑪局1-2-(1)により分離された者が疾病、就職活動の開始等で保護の要件を満たしたにもかかわらず分離解除を怠っていないか
   ⑫稼働能力を活用している夜間大学生を世帯分離していないか
 

第5 自立支援について
 1 生活保護法の「自立」概念を正しく解釈して自立助長を実践している自治体の例に照らして、北九州市の自立支援の現状及び今後の在り方を検証してください。

(要求・質問の事情)
    生活保護制度の目的は、生活保護法第1条にあるとおり、「日本国憲法第25条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長すること」です。
    北九州市では、面接相談における申請権侵害や、辞退届の強要による違法な廃止処分によって、市民の生存権を侵害しているだけでなく、被保護者の自立助長についても、大変問題があると言わざるを得ません。孤独死した小倉北区の男性のケースでも、就労指導と称して、就労の強要しかしていないことや、小林正己保健福祉局地域福祉部長の「辞退届による廃止を否定されたら生活保護からの自立はありえないのでは」(資料11 朝日新聞7月22日朝刊)との発言に現れているように、北九州市は「自立」を、それこそ生活が不可能なのに保護を受給しないで生活することと捉えているのではないかと考えざるを得ません。
   しかし、他の自治体では、自立支援に関して、単に「就労自立」のみに偏らず、「日常生活自立」、「社会生活自立」についてもきちんとした位置づけをなし、力を入れて取り組まれているところもあります。
例えば、東京都の板橋区赤塚福祉事務所では、2005年度には高校進学支援プログラムをはじめとするさまざまな自立支援プログラムを策定・実施しています。このことは、2006年5月15日に開かれた全国福祉事務所長会議において報告されています。他の自治体でこのような豊かな内容をもつ自立支援プログラムが策定・実施されているのは、これらの自治体では、自立概念が豊かに捉えられ、日常生活自立・社会生活自立・就労自立の関係が正しく理解されているからだと思います。
これに対し、北九州市では、「平成18年度生活保護法施行事務監査実施結果報告」(資料12)の「4 自立支援プログラムに関する関係機関との連携状況」で、庁外の保健所・精神科病院・社会福祉施設・社会福祉協議会・ケアマネージャー・民生委員・その他、庁内の母子自立支援員・保健師・その他の項目すべてが該当なしとなっているなど、地域の社会資源と連携して被保護者の自立を支援しようという姿勢が欠如しています。


第6 就労支援について
 1 北九州市の就労支援の検証にあたっては、後記(要求・質問の事情)を踏まえ、被保護者個々の実情を省みない「就労指導」をやめさせ、被保護者に寄り添い、どうすればその人が就職できるかを考え、技能習得費の活用など、個々人に合わせてきめ細かい援助をしていくよう指導してください。

(要求・質問の事情)
    北九州市はこれまで「保護率の抑制は被保護者の就労・自立に成功しているため」と説明するなど、北九州市では就労支援が成功している旨の発言をおこなってきました。
    しかし、今年4月の全国福祉事務所長会において配布された、全国の自治体の稼働年齢層の生活保護受給者のうち06年4月~12月の間に新規に就労したか、または増収した人の数の割合が記載された資料をもとに検討すると、北九州市は稼働年齢層の被保護者の就労・増収に成功した割合が1.8%と、全国の政令指定都市の中で最も低くなっています(資料13 平成19年4月全国福祉事務所長会配付資料(抜粋))。
一般的には、この割合が低い理由としては、①就労指導が成功していない、②稼働年齢層の被保護者のうち、そもそも就労可能な人が少ない、③すぐには就労が難しい人を多数保護している、などが考えられます。
    北九州市の場合は、このうち③が原因であるとは考えにくく、①②が原因であると考えられます。なぜなら、被保護者のうち稼働年齢層の者の占める割合が約32%と、全国や政令市平均(約46%)と比較しても目立って低いからです(資料14 被保護者全国一斉調査結果(2004年)から作成した表。「被保護人員、年齢階級・性・都道府県-指定都市-中核市別」の表をもとに加工したもの)。これは、そもそも北九州市では就労の可能性がある稼働年齢層については保護申請をさせないという形で、入口で違法に排除していることのあらわれでもあります。いずれにしても、北九州市で就労指導が成功しているとは考えられません。
    また、「平成18年度生活保護法施行事務監査の実施結果報告」(資料12)の「自立助長の推進状況」では、福祉事務所が自立助長推進対象世帯に選定したケースのうち、「目的達成」されたケースの「自立更生の要因」の中で、「生業扶助の適用」が0件となっています。
    本来、就労支援においては、生業扶助の技能修得費が積極的に活用されるべきですが、北九州市はこれを明らかに怠っています。


第7 北九州市本庁が各区の福祉事務所に行っている監査について
 1 北九州市の監査指導課が作成した「ケース検討票記入上の留意事項」を把握していましたか。把握していたなら、これを黙認していたのはなぜですか。把握していなかったとしたら、その責任についてどのようにお考えですか。

(要求・質問の事情)
北九州市の福祉事務所による違法な申請権侵害は、各福祉事務所の独自の判断ではなく、市本庁が主導して行っていたものです。
同市保健福祉局総務部監査指導課が作成した生活保護法施行事務監査における「ケース検討票記入上の留意事項」では、「面接相談の状況」の「申請受理」の検討項目について、「ケース診断会議にかける等必要な措置がない」「能力不活用、資産活用、不正受給再申請等の受給要件について疑義があるにもかかわらず、内容が十分検討されず申請書が受理されている」場合は指摘を行うとされていました(資料1 北九州市生活保護問題全国調査団報告書13頁、同資料69頁参照)。
福祉事務所に対してこのような指導監査が行われていたということは、極めて重大な法令違反です。「保護申請を受理しない」ということは法令上ありえないにもかかわらず、面接相談段階で申請者を選別し、不当な事前審査によって申請を受け付けないように指導するなどということは、生活保護法および行政手続法で絶対的に保障されている市民の保護請求権(申請権)を組織的に侵害しているものと言わざるを得ません。「やみくもに申請権を主張する」(資料1 北九州市生活保護問題全国調査団報告書 資料68頁 門司福祉事務所の平成17年度生活保護業務意見交換会提出資料)など、北九州市の福祉事務所が作成した文書に市民の保護請求権行使を敵視する記述が多く見られるのはこうした市本庁の指導に起因しているものと考えられます。
北九州市生活保護問題全国調査団などの批判を受けて、この「ケース検討票記入上の留意事項」の記述は今年度からは変更されていますが、生活保護法第23条および地方自治法施行令第174条の29により政令指定都市の本庁が各区の福祉事務所に対して行う事務監査は地方自治法に定める法定受託事務であり、都道府県・指定都市の本庁が管内の福祉事務所にどういう監査を行っているかについても、貴省は毎年監査を行っているはずです。にもかかわらず、北九州市の監査指導課が行っているこのような違法な指導を放置・黙認していた貴省の責任は極めて重いと言わざるを得ません。


第8 北九州市の生活保護行政の姿勢全般について
 1 北九州市の生活保護行政のどこが「適正」「高い実施水準」なのか、厚生労働省としての見解を明らかにしてください。

(要求・質問の事情)
    上記の様々な問題点に加え、北九州市においては、被保護者に対して、地区担当員等の福祉事務所職員による暴言、身体的暴力などの人権侵害事例が多数報告されています(資料1 北九州市生活保護問題全国調査団報告書6、11頁、資料2 北九州市生活保護問題全国調査団資料集25~26、82~90頁参照)。
    また、北九州市においては、各種公文書の偽造・改竄の疑いや、報道機関等に対して虚偽の説明をしていた事例が多数あります。
昨年起きた門司区での餓死事件では、保健師の報告を福祉事務所が改竄した疑い(資料15・16 読売新聞・西日本新聞7月11日朝刊)があります。
小倉北区の男性餓死事件については、「普通就労可」との病状調査票について主治医が「自分はそのような診断はしていない」と抗議しています(資料17~23 小倉タイムス8月1日号、毎日新聞8月10日朝刊、朝日新聞・読売新聞・毎日新聞・西日本新聞・8月10日夕刊、朝日新聞・毎日新聞8月11日朝刊)。
    小倉北区の男性餓死事件について、北九州市は「自立の目途があるかどうか調査せずに保護を廃止するのは違法」とした昨年9月の広島高裁判決を一貫して「知らなかった」としてきましたが、昨年10月26日に行われた北九州市の保護担当課長会議で判決を報じた新聞記事が配布されていたことが明らかになっています(資料6 朝日新聞8月1日朝刊)。
    このような北九州市の生活保護行政について、貴省は昨年の市本庁および小倉南福祉事務所に対する監査においても、「福祉事務所が一体となって、生活保護の適正実施に取り組んでいる」「今後とも、こうした保護の適正実施に向けた取り組みを継続して実施し、引き続き高い実施水準の維持、向上につとめていただきたい」(資料3 厚生労働省監査結果概要(小倉南福祉事務所)1頁)「本庁としてのリーダーシップを十二分に発揮し、本庁と事務所が一体となって保護の適正実施に取り組んでいる。今後も管内の保護動向等に留意しながら福祉事務所への適時適切な指導・支援を引き続き行っていただきたい」(同2頁)などと賞賛しております。
貴省が北九州市に対してこのような高い評価を与えるのは、あまりに不可解であって、貴省自体が北九州市の違法行為を容認・推進してきたものと評価せざるを得ません。


第9 旧厚生省からの派遣職員について
 1 北九州市の生活保護行政について、旧厚生省からの派遣職員が果たしてきた「一定の役割」についての見解を明らかにしてください。

(要求・質問の事情)
北九州市では、1967年に各区の福祉事務所を指導する現在の保健福祉局総務部監査指導課の前身の部署が設立され、その課長は1997年度までの31年間のほとんどの間、貴省からの出向者が務めていました。このことについて、北九州市は「全国の生活保護行政の実情に通じ、広い視野から福祉事務所の指導を行うことができる人材を求めた結果であり、本市の生活保護行政の適正実施の実現に向けて一定の役割を果たしたものと考えています」(資料24 テレビ朝日系列「サンデープロジェクト」からの取材に対する回答)としています。
   北九州市が長年に渡る違法行為における「一定の役割」を旧厚生省からの派遣職員が直接担ってきたと考えざるを得ず、そうであれば、貴省の責任は極めて重いと言わざるを得ません。


第10 北九州市の生活保護行政の全体的な評価について
1 北九州市の生活保護行政のこのような実態は、地方自治法第245条の7にいう「法定受託事務の処理が法令の規定に違反していると認めるとき、又は著しく適正を欠き、かつ、明らかに公益を害していると認めるとき」に該当することは明らかです。直ちに地方自治法245条の7第3項により福岡県知事に対して北九州市長に「是正の指示」を行うよう指示するか、または同条第4項により厚生労働大臣みずからが北九州市長に対し「是正の指示」を行ってください。
 2 以上の諸事情を踏まえて、北九州市の生活保護行政について、どのように評価されていますか。具体的にお答えください。

以上